
2024.12.12
2024.11.25
実務
半導体は急速に進化する技術の中心として、日常生活に欠かせない多くの製品に使用されており、社会の発展を支える基盤となっています。特に、デジタル社会が急速に進展する中において、製造業での活躍を考える方におすすめの分野です。
本記事では、半導体の基礎知識から製造工程、業界の最新動向までを分かりやすく解説します。これから半導体製造業に挑戦したい方、半導体の魅力を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
近年、半導体の特性を利用して、さまざまな技術が実現されています。この章では、半導体の特徴や種類について見ていきましょう。
半導体とは、金属のように電気を通す「導体」と、ゴムやプラスチックのように電気を通さない「絶縁体」の中間の特性を持つ物質のことです。その大きな特徴には、状況に応じて電気を流したり、遮断したりできる点にあります。この性質を利用して、電子機器のオン・オフの切り替えや情報の処理を行います。
主に、トランジスタやICチップといった電子部品が半導体をもとに作られており、スマートフォンや家電、自動車の制御システムに至るまで、さまざまな電子機器の動作に欠かせない役割を果たしています。
<主な材料はシリコンが多い>
半導体の主要材料には、シリコンが最も一般的に利用されています。純度の高いシリコンの場合、ほとんど電気を通さないことから、電気特性を調整するためにリンやホウ素などの不純物を加え、導電性を持たせることが必要です。この技術により、シリコンは多様な電子機器に使用される素材となります。
また、近年は特定の用途に応じて、窒化ガリウムや炭化ケイ素など、新しい素材も採用されています。これらは、パワー半導体として電力管理に利用されており、高温・高電圧に強いことが特徴です。
<温度によって電気抵抗率が変わる>
半導体には、温度の変化に応じて電気抵抗が変化するという特性があります。例えば、温度が低い状態だと電気抵抗が高くなり、電流が流れにくくなりますが、温度が上がると電気抵抗が下がり、電流が流れやすくなるのです。
この性質はバンドギャップに関係しており、温度の上昇によって熱エネルギーが増すことで、電子が価電子帯から伝導帯に移動して電流が流れます。こうした温度や光に対する変化を通じて、半導体は精密な電子制御が可能なのです。
<n型半導体>
n型半導体とは、シリコンなどの真性半導体にリンやヒ素、アンチモンといった不純物を添加して作られる半導体です。不純物として加えられるこれらの元素は、真性半導体よりも多くの価電子をもっているため、自由電子が発生します。
この自由電子は、マイナスの電荷を持つことから「n(negative)型半導体」と呼ばれ、電圧がかかるとプラス電極側に移動して、電流が流れる仕組みとなっています。
<p型半導体>
p型半導体は、シリコンなどの真性半導体にホウ素やインジウムといった不純物を加えて作られます。n型半導体と反対に、真性半導体よりも価電子の量が少ないため、正孔(ホール)が生まれ、電子がこの正孔を埋めるように移動して、電流が流れる仕組みです。
この正孔がマイナス電極側に向かうように見えることから、「p(positive)型半導体」と呼ばれています。
半導体製造業は、生活に欠かせない産業として急速に成長しています。一方で、国際競争や技術革新が激化し、日本の立ち位置には変化が見られる分野です。ここでは、半導体製造業の現状を解説します。
半導体製造において、日本の材料メーカーは世界的に重要な役割を果たしています。シリコンウエハーやフォトレジスト、エッチングガス、パッケージ材料など、半導体の生産に欠かせない素材の多くを供給しているのは日本の企業です。
これらの材料には、優れた品質と精度が求められるため、日本企業の高度な技術力が強みとなっており、世界トップのシェアや市場の大部分を占めるものもあります。
かつて日本では、1990年代に世界の半導体市場で約半数を占めていましたが、その後、韓国や台湾、アメリカなどの国々が急成長し、日本のシェアは次第に低下していきました。
2020年代になると、日本のシェアは一桁にまで減少し、売上ランキングでも日本企業の存在感は薄れています。経済産業省の予測によると、2030年には日本の半導体生産がほとんど見込まれないとされ、かつての地位から大きく後退している状況です。
2024年以降、日本の半導体製造業は、政府支援の強化によって国内生産の拡充を目指しています。なお、2023年度には補正予算案で約1兆9,800億円が投じられ、AI関連やロジック製品の需要拡大に対応するために、新しい工場の建設が進行中です。
しかし、半導体の需要はAI関連を除くと低調で、2024年後半での回復は限定的と予想されています。2025年以降は、AIや自動化、環境対応分野での成長が注目されており、半導体市場における競争力が回復することに期待されます。
半導体製造は、高度な技術と複雑な作業の連続ですが、完成までに大きく3つの工程が必要です。それでは、半導体が製品になるまでの工程を詳しく見ていきましょう。
設計工程では、製品の用途に応じた回路とパターンを細かく計画し、シミュレーションによって最適なパターンを確認します。具体的には、精密な回路を作成し、エラーがないかを徹底的に検証した後、フォトマスクと呼ばれる特殊なガラス板を作成するという流れです。
このフォトマスクとは、シリコンウエハーに回路パターンを転写するための原版を指し、フォトマスクによって複雑なパターンがシリコンウエハー上に正確に配置されます。
前工程では、基盤となるシリコンウエハーの表面に回路パターンを作成します。まず、シリコンインゴットを薄くスライスし、表面を研磨して微細な凹凸を取り除きましょう。
次に、先ほど準備したシリコンウエハーに、酸化や薄膜成膜、エッチングなどの工程を繰り返し、複数層の回路パターンを形成していく作業に移ります。その後、ウエハーに不純物イオンを注入して半導体の特性を付加し、最終的には電極を埋め込んで導電性を持たせます。
後工程では、シリコンウエハー上に作成した半導体チップを切り出し、製品として仕上げるための加工と検査を行います。まずは、ウエハーをダイヤモンドブレードで細かく切断する「ダイシング」により、チップ単位に分離します。
続いて、金属フレームにチップを固定する「ダイボンディング」、金線で電気的接続を行う「ワイヤーボンディング」を施します。最後に、樹脂でチップを包む「モールディング」によって保護して完成です。最後に、厳しい条件下で動作確認などの検査を行い、基準を満たした製品のみが出荷されます。
半導体業界は、デジタル社会を支える重要な分野として、働く場や成長機会が増えています。もし新しいキャリアの一つに製造業をお考えでしたら、半導体業界での就職や転職を考えてみてはいかがでしょうか。
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